◇【地ソース物語】(1)ヘルメスソース 主役引き立て“横綱級”-ライフニュース:イザ!
チャットかなんかで大阪在住の方からその名前を聞いたことがあるぞ、ヘルメスソース。じつに美味そうだ。
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お好み焼き、焼きそば、串カツ…。粉もん料理や揚げ物になくてはならないのがソースだ。もとは海外から入ってきたものだが、独自の風味とこだわりの製法で、地域ごとの料理とともに地ソースとして定着している。
大阪市東住吉区の住宅街の一角にある石見(いわみ)食品工業所に近づくと、どこからともなくソースの甘い香りが漂ってくる。粉もん文化にどっぷりつかる大阪にも多くの地ソースはあるが、その中でも横綱級が、ここの「ヘルメスソース」だ。数年前、テレビで紹介されて話題になったが、実物を見た人は少ないはず。家族ら5人が手作業で作るヘルメスソースは、1日の生産量が少なく、流通経路も限られていることから“幻のソース”ともいわれている。
ヘルメスソースには、お好み焼きソースもたこ焼きソースもない、ウースターソースととんかつソースの2種類だけだ。
工場内には所狭しとソースの瓶が積み上げられ、人1人が歩くのがやっと。機械も少なく、ほとんどの工程が手作業だ。ソースのラベルも一枚一枚手で張り付けていく。「うちは卸売りが8割を占める。一般家庭向けの瓶詰は1日400本(1本900ミリリットル)程度だから手で十分」という。
「ヘルメス」の名前の由来は、ギリシャ神話に登場する「オリンポスの12神」の商業の神からきている。ヘルメスの持つ「カドゥケスの杖」はヘルメスソースのシンボルマークだ。創業者の坂井一男さん(故人)がソースの製造を始めるにあたり、親族からヘルメスのエピソードを聞いて、商品名をヘルメスソースにしたという。
一男さんの孫で、現在、監査役を務める坂井一喜さん(37)は「ソースの基本であるウースターととんかつをきちんと作れば、お好み焼きもたこ焼きもおいしくできる」と話す。
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昭和28年の創業以来、ヘルメスソースは、一貫して同じレシピを守り続けてきた。原材料はペースト状に加工したトマトとタマネギにリンゴ。これに十数種類の香辛料と砂糖やはちみつなどを混ぜ合わせる。この材料をタンクに入れて温度を上げてかき混ぜていく。ウースターソースの場合、タンクの仕込みから瓶詰までに約3週間かかる。
坂井さんによると、「とんかつソースなら1日あればできる。基本的な原料や作り方は同じだが、ウースターは仕込んだソースを寝かせて、十分熟成することによっておいしいものができる」といい、「市販のウースターの中には2〜3日で作られているものもある。これじゃ本当のウースターは作れない」。
大きなタンクの中にある熟成したソースの原液を坂井さんがかき混ぜると布で濾過(ろか)されたこげ茶色の液体が1滴、1滴受け皿に落ちていく。ウースターソースができる瞬間だ。
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こうしてつくられたヘルメスソースの魅力は、甘さの中に潜む、香辛料のスパイシーな香り。それでいてあっさりとした風味は、お好み焼きや串カツなど“主役”の味をひきたてる。
坂井さんは「ソースの原料自体はどこの会社でもそんなに変わるもんじゃない。コショウなど香辛料のブレンドの割合でソースの味が決まる。どんなソース会社でも香辛料のブレンドは1番の企業秘密」と話す。
「創業以来守り続けた秘伝のレシピはある。しかし本当に大切なのは、今までうちを大切にしてくれたお客さんの信頼を裏切らないこと。流行に流されず、地に足が着いたソース作りをすること」と話す坂井さんの表情は、50年を超える歴史を支える責任感に満ちていた。
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